JINSでは、何百万本ものメガネフレームの製造と同時にたくさんの樹脂端材がうまれています。この素材に新しい命を吹き込みたい!
今回の「1万人のクリエイターミーツPASS THE BATON」は、「新しい当たり前をつくる」をコンセプトに躍進を続けるアイウエアブランド「JINS」とのコラボレーションです。
テーマとなるのは、メガネの製造過程で発生する、メガネフレームの端材。さまざまなカラーバリエーションがある端材は、とても小さいですが加工がしやすく数も多いため、プロダクト化の大きな可能性を秘めています。
JINSはなぜ、リサイクルにチャレンジしようとしているのでしょうか? 彼らのものづくりにかける思いとは? JINSでマーケティング室 マネジャーを務める矢村さんと、調達を一手に引き受けている土屋さんにお話を伺ってみました。
● これまでリサイクルが難しかった…樹脂端材の事情
● 切る、けずる、くっつける…自由に加工できる「アセテート」
● 新しいけど、尖っていない? JINSのブランドストーリー
● 600万本のメガネに込める作り手の「思い」
● 報われない素材たちにクリエイティブの手を!
これまでリサイクルが難しかった…樹脂端材の事情
JINSではアイウエア業界ではじめて店頭にメガネの回収ボックスを設け、積極的にリサイクルに取り組んでいます。
しかし、製造工程で発生する樹脂端材の再利用については、なかなか良い解決策がみつかっていませんでした。過去に、端材を使ったグラスコードをつくってノベルティとしてお客様に配布したこともありましたが、マス向けのものになりにくいという課題がありました。現在、年間で何百万個もの端材が生まれますが、そのほとんどが捨てざるを得ない状況です。
そこで、今回の「1万人のクリエイターミーツPASS THE BATON」では、フレームのレンズ部分の穴を切り出すときに発生する、楕円形の樹脂端材をテーマとして取り組むことになりました。
この樹脂はアセテートと呼ばれるもので、原料は綿花や材のパルプなどが植物繊維。一般的にセルフレームと言われる、プラスチック系メガネの素材のほとんどがアセテート*です。
*ただし、JINSの「Air frame(R)」は、アセテートと異なる樹脂素材を使用しています。
切る、けずる、くっつける…自由に加工できる「アセテート」
アセテートは発色がよく、自由に色を変えられるのが特徴で、いくつかのな色の樹脂を積層したもの、柄に奥行き感のあるデミ(べっ甲柄)、透過性のもの、透過しないものなどバリエーションも豊富です。とくに、様々な色の板を美しく「積層」できるのは、アセテートならでは。
加工方法は切ること、削ること、接着すること。さらに「バフ」と呼ばれる磨きの工程によって、磨けば磨くほど美しくなります。ある程度の強度もあるので、レーザーによる彫刻・切り出しも可能。多くは6ミリ厚ですが、薄いものは4ミリのものもあるそうです。また、熱を加えて曲げることもできます。
新しいけど、尖っていない? JINSのブランドストーリー
「JINS」のブランド立ち上げ以前の2001年頃まで、日本のメガネ業界は保守的な流通網と販売形態が続いており、「メガネといえば何万円もするもの」というのが当たり前でした。
ジェイアイエヌ創業者で社長の田中仁さんは、いまままでのメガネの古い商慣習や、お客さま目線になっていない部分を「ぜんぶ変えてやろう」という思いとともに、JINSをスタート。以降、軽量メガネ「Air frame(R)」や、パソコン用メガネ「JINS PC(R)」といった機能性とファッション性を兼ね備えた新しいアイテムを次々と発表し、一躍人気のアイウエアブランドとなりました。
JINSがめざす商品づくりは、「新しいこと」ではありつつも、奇をてらうものではありません。後々スタンダードになっていくものを、どんどんアイウエアという世界で生み出していくこと──そのため、より多くの人に受け入れてもらえるものづくり、マスへの視点を大切にしています。
そのため、フレームの色・柄のバリエーションは豊富であっても、フレームの形自体はスタンダードで選びやすい製品が多いのが特徴です。
「日本人の平均的な顔型にあわせてデザインしているので、どなたでもかけやすいんです。海外のブランドのものメガネって、日本人の頭や鼻の形にはなかなか合わないので」(矢村さん)
多くの人のライフスタイルに付加価値を提供するというこだわりは、価値づくりや価格設定、商品のデザインなど、あらゆる面に反映されています。
「“ほんとうに尖ったファッションをする人のためのアイテム”は、ほとんどつくることはないです。やはり、マスを向いているというのは、うちの哲学なんです」(矢村さん)
600万本のメガネに込める作り手の「思い」
JINSで製造販売するメガネの数は、年間約600万本。ブランドの特色でもあるシンプルプライスを実現するには、付加価値の高いものを安く、安定的に製造し提供するのは大前提です。一方で、メガネをつくるには必ず「磨き」などの手作業が必ず発生し、その精度が品質を左右するのだと、土屋さんは語ります。
「日本のお客様の品質に対する要求は、やっぱりほかの国に比べても高い。機能と、ファッション性と、安心。常にこの3つは求められていて、どこでつくろうと僕たちはそれに応えないといけない。
だから、海外の協力工場の人たちには、僕たちのものづくりの理念や商品の意味・背景をちゃんと伝えて、理解してもらうようにしています。ただ“これを、この値段でつくって”だけでは、たぶん、ほかのところとおなじ仕上がりになってしまうし、商品に思いも入っていかないんです。一つの言葉とか、意味が伝わるだけで、できあがりは変わってきます」(土屋さん)
報われない素材たちにクリエイティブの手を
最後に、土屋さんと矢村さんがクリエイターのみなさんに期待していることを訊いてみました。
「メガネという分野だけに固執せず、僕たちとは違った角度や感性で、新しいアイテムを提案してほしいですね。
それと、この素材をうまくいかしてくれたらすごくうれしいです。アセテートが持つ光沢や奥行き感等の質感は、JINSのなかでも再度見直されています。まだ一般的には出回っていない素材ですし、使い勝手もいい。サイズは限られていますが、きっとおもしろいテーマになるんじゃないでしょうか」(土屋さん)
「とにかく何か、おもしろいものをつくってほしい! ということに尽きますかね。この“報われない子”たちは、めちゃめちゃいっぱいいるので(笑)。メガネという枠を飛び越えた、大胆な発想を期待したいですね。
今回、クリエイターの方たちのアイデアによって端材が再生できるのであれば、それは自社だけでは達成できなかったことですし、新しい価値になると思っています。ぜひ、よろしくお願いします!」(矢村さん)
たくさん数があるにもかかわらず、日の目を見ることが無かった素材たちに、クリエイティブの手をさしのべてください! デザイン・アイデア募集は9/2まで。
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