台湾×日本 クリエイターがNEW RECYCLEで化学反応~ワークショップレポート

Jun 26, 13 • No Comments

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台湾デザインセンター×PASS THE BATON×ロフトワークのワークショップを開催

2013年6月7日(金)、8日(土)の2日間にわたり「1万人のクリエイターミーツPASS THE BATON」プロジェクトをテーマにした台湾デザインセンターとの台日共同ワークショップが、ロフトワークで開催されました。

台湾デザインセンターは、台湾におけるクリエイティブ産業の発展や世界市場での競争力を高めることを目的に発足した国の機関です。今回、日本のリアルなデザイン市場から学ぼうと、台湾デザインセンターが公募したクリエイター11名が来日。来日した台湾人クリエイターと日本人クリエイターが4つの混合チームを編成し、2日間のワークショップで「1万人のクリエイターミーツPASS THE BATON」プロジェクトにチャレンジしました。

言葉や文化の壁を越え、“デザイン” “ものづくり” という共通言語を通じて行うコラボレーション。その様子をレポートしていきます!


ワークショップで“生まれ変わらせる”4つのアイテム


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(左から)
● おかきの名店・赤坂柿山のちょっとした欠け・割れのために非正規品となった高級おかき「おはじき」と、綺麗なデッドストック缶を活かした、新しいギフトのデザイン・アイデア

● 英国のオーガニックスキンケアブランド・ニールズヤードレメディーズの美しいブルーボトルを利用した、新プロダクトのデザイン・アイデア

●ユニークなステテコブランド steteco.com(ステテコドットコム)が提供する、日本でおなじみのあったか肌着「らくだ生地」の製造過程で生まれる余り生地を利用したニューアイテムのデザイン・アイデア

● ドイツの高級ぬいぐるみブランド・シュタイフと日本の老舗子供服メーカー・ファミリアがコラボレーションしたくまのぬいぐるみ“ファミちゃん”を利用した新プロダクトのデザイン・アイデア


ワークショップのテーマ “Reborn=生まれ変わる”。

DSC_3642△今回のワークショップのテーマを発表するロフトワーク代表取締役 林千晶

ワークショップのテーマ は“Reborn=生まれ変わる”。世の中の「舞台から降りてしまった」製品に対し創造力によってもう一度光を当て、魅力的なプロダクトへ生まれ変わらせていきます。

3~4人に分かれたチームごとに4つのアイテムの中から1つ選び、そのアイテムにどのような新しい価値を与えていくかアイデアを出し合います。ワークショップ2日目にプロトタイプを制作し、最終的なプレゼンテーションを行います。

DSC_3615△今回のワークショップのお題について語る、株式会社スマイルズ 代表取締役 遠山 正道氏

kigi△ パスザバトンのアートディレクションを手掛ける、キギ(植原 亮輔氏・渡邉 良重氏)によるトーク。アイデアが採用された場合は、パスザバトンから実際に販売される可能性が!


ワークショップ1日目/5つのチームに分かれてアイデアブレスト

ワークショップの参加者は、台湾人11名、日本人7名の計18名。台湾人と日本人を混合した5つのチームに分かれ、アイテム選定のブレストから課題の洗い出し、方向性の決定、プロトタイプ制作、具体的なアイデアの発表まで、3時間というタイトな時間で進めていきます。

ここで大きな難関となったのが、日本語 対 中国語という“言語の壁”。しかし、片言の英語やパソコンなどを用いながら互いに誠意をもって考えを伝え合ううちに、どのチームも時間の経過とともにこの課題をクリアできるようになりました。

アイテムが決まったら、どうデザインし、どのような価値を与えていくのかアイデアを出し合います。言葉の壁を乗り越える秘策は、“アイデアをイラストにする”ということ。それぞれのアイデアを掛け合わせたり、膨らませたりしながら、ディスカッションを繰り広げました。

jt_oa△(左)(チーム名:メンバー) J&T:平井俊旭(株式会社スマイルズ)、山本 尚毅(Granma Inc.)、王沼詠(天霖光學股份有限公司)、林令惠(LHL Studio) 
(右)O.A.:渡辺ゆうか(Fablab Kamakura)、黃姿瑋(彌勒設計)、鄭筑云(實踐大學)、王筑儀(宏洋科技有限公司)

sms_camel△ (左)SMS:濱田真一(株式会社ロフトワーク)、謝嵐亘(萬久平塑膠工業股份有限公司)、廖梓婷(亞格廣告有限公司)
(右)Camel:松本健一(株式会社モトモト)、本田千尋(KIGI)、呉宜紋(平衡木設計有限公司)、駱明宗(亞盟國際空間設計事務所)

goodidea Good Idea:上村貴史(株式会社スマイルズ)、廖以誌(彌勒設計)、戴佳琳(和碩聯合科技股份有限公司)







アイテム発表と方向性のチェック

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1日目の締めくくりは、各チームによる選択したアイテムとアイデアの発表。遠山氏と林氏に加え、キギ 植原氏と渡邉氏も急遽参加してくださることに。各チームの方向性や進行状況をチェックしながら、丁寧にアドバイスを与えていきます。ワークショップが始まってわずか3時間とは思えないほどの斬新なアイデアの数々に感嘆!


ワークショップ2日目/プロトタイプ制作~最終発表

1日目のアドバイスを受けてデザイン案を調整しながら、プロトタイプ制作をスタート。必要な部材の買い出しに出掛けたり、会場のビル1階にある「FabCafe」に設置されたレーザーカッターを使用したり、持ち込んだミシンで縫製を行ったり、プレゼンテーションへ向けた資料を準備したり……。各々の得意分野を生かしながらチームワークで進んでいきます。

頭で考え、手を動かし、意見を交換し合いながら、制作に励む参加者たち。その表情は、発表の時間が迫るにつれてより緊張感が帯びてきました。

DSC_4072△複雑なディティールのカットはレーザーカットで行いました

DSC_0609△自宅から会場までミシンを持ち込んだ参加者も

IMG_0510△本職はグラフィックデザイナーである松本さんですが、見事な手さばきでラクダ生地を裁断しています

DSC_4205△最終プレゼンに向けてプロトタイプの仕上げに入るスマイルズの上村さん。

IMG_0514△出会って2日目とは思えないほど、チームワークも抜群です!


いよいよ作品の最終発表!

DSC_shinsa△ (左から)遠山正道氏、株式会社ファミリア 代表取締役社長 岡崎忠彦氏はじめ商品部の方2名、株式会社ニールズヤード レメディース 販売事業部 吉田奈美子氏、林千晶

いよいよ、2日間のチームワークの成果の発表です。講評は、遠山氏、林、ニールズヤードレメディーズの吉田奈美子氏、ファミリアの岡崎忠彦氏はじめ社員の方々。商品化を視野に入れ、厳しい審査が行われます。各チーム、プロジェクターで作品の制作背景やストーリーを紹介しながら、熱意のこもった個性豊かなプレゼンテーションを展開。どのチームの作品も完成度が高く、真摯に取り組んだ様がしっかりと伝わってきます。

中には、「どうやって商品化するのだろう?」と感じさせる斬新すぎるアイデアも。それでは、一体どんなアイデアで生まれ代わったのか見て行きましょう!

<作品紹介>
チーム J&T/選択したアイテム:シュタイフ×ファミリアによるくまのぬいぐるみ

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くまのぬいぐるみと遺伝子情報キットをセットにした製品を提案。遺伝子情報キットでは、主な生活習慣病や才能まで調べることができるので、子どもが生まれた家族へのギフト需要をイメージしています。今後の展開としては、個人情報をクラウド上にストックし、母子手帳、アルバムなどとともにインタラクティブに活用できることを想定しているとのこと。商品化の際は、ぬいぐるいみと遺伝子情報キットに加え、食育絵本、くまの感情表現パーツ、くまのお家、取り扱い説明書をセットにする予定。

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【参加者の感想】
「講演で林さんがお話されていた“Innovation”というキーワードを第一に考えました。今回の提案は遠山さんもお話されていたように、全く異なる経験を持った人同士が集まったからこそ出てきたアイデア。普段オフィスでは出てこないような視点でディスカッション出来た事はとても良い経験になりました」(平井俊旭氏)

「とても有意義なテーマでした。異なる国籍や専門領域のメンバーとの取り組みはやはり成果が違います。短い時間の中で国際性に富んだ専門知識を身につけることができましたし、貴重かつ新鮮な体験となりました」(王沼詠氏)

チーム O.A./選択したアイテム:赤坂柿山のおかきとデットストックの缶

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富山県で大切に育てられた米を用い、職人が丁寧につくりあげたおかき。その本質を見失わないようにデザインしていったそうです。風にたなびく稲穂、一粒一粒の米、ちょっとした欠けや割れのあるおかき、口の中に広がるハーモニーを掛けて、コンセプトは“メロディ”に設定。その様子をドッドや譜面で現し、パッケージにプリントを施しています。さらに、台湾で一般的なコンビニのお弁当用の袋の形状をヒントに、缶のグラフィックをモチーフにした袋を制作。

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【参加者の感想】
「おかきを選んだのは、メンバーの意見が一致したということと、最も難しそうだったから。どう変化していくのか、チャレンジしてみたかったんです。また、このワークショップでは自分が日本人であることを再認識した2日間となりました。例えばデザインの面においても、日本人は“引き算の美学”のようなものを潜在的にもっていますが、彼女たちは大胆に“足して”いくんですね。私はファシリテーター的な立場でいたのですが、その調整にも苦戦しました」(渡邉ゆうか氏)

「貴重な経験ができてとても嬉しかったです。このチームの台湾人3人は、誰もデザイナーではないんですね。その中で渡邉さんが上手にリードしてくださったことに感謝しています」(黃姿瑋氏)

チーム SMS/選択したアイテム:ニールズヤードレメディーズのブルーボトル

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ボトルを溶かして何かをつくるのではなく、もともとあるボトルの形状を生かして新しい価値を加えていきたいと考えたチームSMS。それはボトルが溶けた時点で、ニールズヤードレメディーズというブランドの価値が失くなってしまうという視点から。プロジェクト名は“Rain”。太陽が隠れている時もこのアイテムが部屋に存在していることで暮らしが少し楽しくなる、そんなブランドと顧客の間に生まれる新しいコミュニケーションのカタチを提案しています。ロゴの周りに雨の雫のモチーフを施し、テーブルベル、フラワーベース、ルームフレグランス、キャンドルホルダーと、生活を彩る一連のシリーズとしての展開を想定。

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【参加者の感想】
「試作品が完成してから、ブランド名やロゴ、ストーリーなどスピーディーまとまっていったので、改めてプロトタイプの持つ力を感じました。最初は不安もありましたが、参加して自信もつきましたし、何よりすごく楽しかったです」(濱田真一氏)

「身近にある“デッドストック”という資源と向き合い、市場価値のあるものに再生するというテーマにインパクトを受けました。このような文化や国籍の異なるメンバーとのコラボレーションは、想像を超えるアイデアが生まれる可能性を秘めていると思います」(謝嵐亘氏)

チーム Camel/選択したアイテム:らくだ生地の余り布

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股引のイメージの強いため、若い人に嫌煙されがちならくだ生地。しかし、生地そのものの色の美しさや肌触りの良さに着目し、らくだ生地そのもののイメージアップを図っていくことを目指したといいます。商品の背景にストーリーを肉付けし、その世界観を構築していきました。

制作したのは筒状の余り布のカタチを生かした、シンプルでお洒落なストール。8色ある生地を“砂漠と空”“男性と女性”などの対比した組み合わせで表現しています。“アフリカから東京に旅をしにきたらくだのカップルが、冬を迎え自分の毛のマフラーを彼女にプレゼントをする”というプロダクトのストーリーをなぞり、らくだがマフラーをしているというパッケージに。ラベルはアフリカの伝統的なテキスタイルパターンをイメージしたものとなっており、「カップルキャメル」というブランド名も記載されています。

「らくだから、さむいから、すきだから、~だから、贈る」というキャッチコピーとともに、気軽なギフトとして贈れる価格帯を想定。

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【参加者の感想】
「メンバーのニックネームが“Camel”であったこともらくだ生地を選んだ理由のひとつでした。国籍の異なるメンバーとのワークショップを通じ、育ってきた環境において趣味趣向が異なるということに改めて気付けたことも、良かったと感じています」(松本健一氏)

「らくだはキャラクター化に適していると思い、何かストーリーとともに商品展開ができないかと考えました。プレッシャーも大きかったですが、大変面白いワークショップとなりました。チームワークの在り方や、日本人の謙虚かつ真面目な姿勢など、勉強になることもとても多かったです。みなさんに感謝しています!」(呉宜紋氏)

チーム Good Idea/選択したアイテム:赤坂柿山のおかきとデットストックの缶

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このおかきはほんの少し欠けてしまったり、割れてしまったりしていたことから、商品には至らなかったもの。そこから“カケラ”というキーワードを導き出し、グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』が迷子にならないよう森へ落としていったパン屑と結びつけています。おかきのパッケージには主人公の兄弟や魔女のグラフィックを,缶にプリントされているグラフィックを薄く施したパッケージで全体を包み込んだ、新たなギフト仕様の製品としての提案です。

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【参加者の感想】
「互いの片言の英語を理解し合おうと必死でしたが、幸運にも感性という意味では近いものをもっているメンバーだったんです。最終的に“これだ!”と思えるアイデアを共有できたときの喜びはひとしおでした」(上村貴史氏)

「日本のデザイナーと一緒に課題を考え、モノをつくるという行程は、とても良い経験となりました」(廖以誌氏)


各チームのプレゼンテーションを終えて


各チームのプレゼンテーションを終えて、吉田氏、岡崎氏、遠山氏がそれぞれ講評します。

「みなさんの発表を拝聴し、さまざまな発見がありました。ニールズヤードレメディーズは歴史のあるブランドですが、それだけではこれからの時代に乗り遅れてしまいます。歴史があるからこそ“遊び”ができる企業になっていきたい。今後もいろいろなアイデアを提案していただけると嬉しく思います」(ニールズヤードレメディーズ 吉田氏)

「既存のものに新しい価値を見出すというテーマで考えられたどのチームのプレゼンテーションもすごいなと思いました。チームJ&Tのぬいぐるみと遺伝子キットとセットにするというアイデアも、僕が想像していたものと全く異なるもの。これからの子供の未来や可能性について考える良いきかっけになりましたし、勉強になりました」(ファミリア 岡崎氏)

「自分たちの手を動かし、プロトタイプを制作していくことの強さを感じましたね。ロゴをつくり、商品の撮影を行い、プレゼンテーションの際に“商品”として成立できるイメージへと引き上げていく。このワークショップは、その必要性を認識することができた素晴らしい体験だったと思います。とても楽しい2日間でした」(スマイルズ 遠山氏)

「国の異なるメンバーとのチームワークは、普段どれだけ自国の常識にとらわれているか認識するきっかけになったのではないでしょうか。さまざまなモノの価値の再定義が必要とされる現代において、クリエイティブな視点でその価値をつくり上げる人こそ重要な役割を果たす存在となっていくと思います。」(ロフトワーク 林)



今回のワークショップのテーマ“Reborn=生まれ変わる”を、各チームのフィルターを通して解釈し作品に落とし込む。そのプロセスを通じ、モノに新たな価値を付加することの重要性と必要性を、それぞれが身をもって感じることのできた2日間になったのではないでしょうか。そして、台湾と日本という国籍の異なるメンバーで構成されたチームだからこそ生まれた画期的なアイデア。この“経験”という名のバトンがさまざまなカタチに姿を変え、多くの人々に繋がっていくことを願っています!

ワークショップのテーマとなったプロジェクト「1万人のクリエイターミーツ PASS THE BATON vol.3」は、現在も絶賛作品募集中です(http://www.loftwork.com/blog/pickup/meet10000-03)。さらに7月1日からは新たなアイテムも登場します!
もう一度美しく生まれ変わるようなデザイン・アイデアを皆様ぜひご応募ください。


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